手形


手形とは一定の期日に手形代金を一定の場所で支払うことを約束した、あるいは他人に支払いを依頼した証券をいい、手形法という法律によって成り立つものです。手形は他人に簡単に譲渡出来るように、また支払いが確実に行われるように、色々な工夫がなされていて、商品売買の代金を単に掛取引にするよりも、手形取引にするほうが有用です。

 

例えば現金仕入れを行うと、もちろん手許の現金が減少していきます。掛仕入だと、少し支払時期を延ばすことが出来ます。手形を用いた場合は、手形の決済期間は掛仕入の場合よりも長く設定することができるので、支払いを先延ばしにすることが出来ます。会社の資金繰りが苦しい場合を支払を先延ばしにするために、手形を用いることがあります。

手形法でいう手形には約束手形と、為替手形があります。簿記3級では約束手形が出題されます。

※小切手と約束手形を間違えてしまう人が多いので、注意!

約束手形は振出す人と、受取る人で勘定科目を区別します

約束手形は、「この日にこの金額をお支払いします」と支払いの約束事を記載した証券で、お金を支払う人がお金を受け取る人に対して振り出すものです。約束手形を振り出した人は、支払期日にお金を払わなけれなりませんし、約束手形を受けとった人は期日にお金を受け取ることが出来ます。振り出した人を「振出人」「支払人」と言います。受け取った人を「受取人」「名宛人」と言います。

 

支払手形…約束手形を振り出した人が使う勘定科目。期日にお金を支払います。(負債グループ)

受取手形…約束手形を受け取った人が使う勘定科目。期日にお金を受け取ります。(資産グループ)

支払手形


約束手形は支払人が受取人に対して、支払期日と支払金額を約束した証券になります。支払人には支払い義務が生じますので、負債グループとして処理します。負債グループなので、仕訳時は右側です。期日になりお金を実際に支払った場合は、支払い義務が消滅しますので負債の減少として処理します。仕訳時は左側になります。

問題文には、約束手形を振り出した。という表現が多いです。支払時は決済日を迎え、銀行から支払った。

 

6月10日 商品10,000円を仕入れ、代金は約束手形を振り出した。

9月30日 約束手形10,000円の支払期日となり、当座預金口座から10,000円が引き落とされた。

受取手形


約束手形を受け取った人は、期日になったらお金を受け取ることが出来ます。お金を受け取る権利が発生しますから資産グループになります。資産グループは増えたら左側でしたね。お金を実際に受け取ったら、お金を受け取る権利は消滅するので、資産の減少として右側に仕訳をします。

 

6月10日 商品10,000円を売り上げ、約束手形を受け取った。

9月30日 約束手形の支払期日となり、当座預金口座に10,000円が振り込まれた。

手形の裏書譲渡


保有している約束手形(受取手形は)資産です。債権です。お金を受け取る権利がありますよね。その受け取れる権利、受取手形を支払期日前に他の人に譲渡することが出来ます。要するにお金を受け取れる権利をそのまま他の人に譲る。代金の支払いに充てることができるというのが「手形の裏書譲渡」になります。手形の裏書譲渡をする人は、受取手形を人に譲渡して、受取手形が手許からなくなります。ですので受取手形の減少として処理します。裏書譲渡された人は、手形を譲ってもらうので、受取手形の増加として処理します。

 

6月20日 浜松商店は磐田商店より商品10,000円を仕入れた。その代金として掛川商店が振り出した約束手形を裏書譲渡した。

6月20日 磐田商店は浜松商店に商品10,000円を売りあげ。その代金として掛川商店が振り出した約束手形を裏書譲渡された。

手形の割引き


手形を受け取ると、お金を受け取る権利は発生しますが、受け取れる日は大分先(3か月後とか6か月後)のことが多いです。支払期日までお金は入ってこないんですね。でもお金が必要で支払わなければならなかったりすることもあります。

そんな時に行うのが、手形の割引です。支払期日前に保有している受取手形を買い取ってもらうことが出来ます。買い取ってもらうのに手数料が発生します。手数料を差引かれた金額を受け取ることになります。

 

銀行に受取手形を買い取ってもらう→手許から受取手形がなくなる→受取手形の減少として処理します。

手数料に関しては銀行に受取手形を買い取ってもらうことによって受け取れる金額が減ります。

要するに損をしているということで、「手形売却損」勘定(費用グループ)を使って処理します。

 

7月10日 保有する約束手形10,000円を割引き、手数料1,000円を差引かれた金額が当座預金に振り込まれた。